ミシマさんと幅さん

アサヒラボガーデンに行ってきました。
お酒を飲みながら、本について語ろう、という面白そうなイベントで、
アサヒビールが無料で飲めるのと、コーディネーターが、ブックディレクターの幅允孝さん、ゲストがミシマ社代表の三島邦弘さん、ときたら、行くしかないでしょ。

三島さんを知ったのはAERAの「現代の肖像」でした。
出版不況といわれる中で、新たに出版社を立ち上げたロスジェネの…みたいな紹介でしたが、ちょうど「街場の教育論」(内田樹著・ミシマ社)を買った頃でもあって、妙に気になってました。妙に気になったわけが、昨日ご本人を前にしてやっと分かった気がしました。

【三島さんのおはなし】
1.出版元から読者に本が届くまでは、出版社→取次店→書店→読者、というルートが通常だが、これをミシマさんは(=ミシマ社であり、三島邦弘氏)なるべく読者に近いところで本づくりがしたいと思い、新たなルート開拓を試みた。取次→書店、というルートは一日あたり270タイトルもの新刊が出る日本の出版業界においては、そして、日本全国、同じ日に同じように同じ価格で本を販売するためには、とてもよくできたシステムで、うまくいくパターンなんだけど、もっと違う本の売り方、読者への届け方があるはず、という思いで突き進んできている

2.三島さんは独立する前、出版社で働いていたときは、編集者として階段をのぼっていくしか道がないのをおかしいと思って、社内の然るべき部署に、提案書を出したりしていた、と。また、出版社にいるときも、編集者としていい本作りがしたいと思い、全力で働いた。しかし自分が頑張れば頑張るほど、そこ(=会社、組織、業界)にある、矛盾や悪習を清濁飲みこんでいる既得権益に加担しているように思えてきて、本来自分がやりたかった、好きなこと(=本づくり)、好きな場所(=本作りをする出版業界)からかけ離れていくような気がしてならなかった

3.既成概念や既得権益を変えていくためにそこにいる他人に向かってパワーを使うよりは、自分が良いと思うことを思い切って自分の力で進める方がいいと思い、自分で出版社をつくることを決めた

4.本づくりのモットーとなっているのは、内田樹氏に言われた「三島くんは、顔の見える数百人の人に向かって本づくりをしなさい」と言われたことにある
【ここからは幅さんのお話も混ざります】
(本作りも本選び、書店づくりも)個をひとつずつ大切にすることしかない。読者を信じることしかない。ひとに向き合ってひりひりしながら聞くしかない
書店でも、本に「呼ばれる」ような瞬間がある。「Catch me!」と。
本にはたくさんのことば(=言霊)が宿っているから。
逆に本をhuntすることもあるが、そのときはそれを手にして読む「覚悟」も要る。

このあたりのお話は、三島さんの著書「計画と無計画の間」にたくさん書いてあるそうなのですが(ちなみに私は金曜日にやっとこの本を手に入れたばかり。まだ読まないうちに、このイベントにいきました)、“熱く”というわけではなくて、何ていうのでしょう…非常に“朗らかに”“楽しそうに”話す三島さんと幅さんが、非常にいい雰囲気でした。朗らかさでこちらまでニコニコ笑顔になれるような、楽しい時間でした。

 振り返って自分の仕事とと照らし合わせて、����とも思い当たる節がありました。
 長年、これが一番便利という流通システムがあり、決められたとおりに、何も考えずに、過去行われていた通りにやっていたら今でもうまくいってるように思える一方で、もっと個々の取引先とか、個々のお客さんに向き合って、もっと良い仕事がしたい、もっと喜んでもらいたい、という気持ちもあります。
 自分がしたくてもできないことを朗らかにやってのけてる人たちだから、憧れるんだなあ、と実際にお会いしてよ〜くわかりました。
 三島さんや幅さんのように、思いをかなえるために起業するほどの力はないですが、思いを思い出させてくださっただけでも、お二人には本当に感謝です。

 そして、アサヒビールさんにも感謝、ということで今日はアサヒスーパードライを買いました。(昨日はタダで会場で飲ませていただきました)。
そして、昨日いただいたミシマさんからのプレゼントは、思い出した志を忘れないように、会社携帯に貼りました!