ちきりんさんの「未来の働き方を考えよう」をよんで

 相変わらずちきりんさんの(@InsideCHIKIRIN)のブログを楽しんで読んでいるのですが、新著の「未来の働き方を考えよう」をとりあえず2回読み終えました。今までブログでちきりんさんが語ってきたこともふんだんに盛り込まれていて、ふだんからちきりんさんの煽りに慣れているはずの私でも、やっぱり一度立ち止まって「二回目の働き方を考えてみよう」と思わされる一冊でした。
 漠然と思っているのは、2回目の働き方は「故郷の街にコミットする行き方」にしてみたいなということです(まだシナリオ化=言語化できるまでにはなっていないのですが…)

 今、私の勤務先は、「個人」に対する優位性を持ち続けてきたマスコミ企業ですが、その優位性が損なわれ始めていることは確かです。残念ながら成長する市場というのを入社以来経験していません。しかし一方で私の部署では、転職する人も、途中入社で来る人も少なく、「一生ひとつの仕事」という働き方をする人がほとんどです。組織のもつ「名刺の力」やいわゆる安定感をわざわざ捨てようという人が少ないのも、中にいて分かります。
 一方で、新入社員で就いた仕事をずっと続け、そのラインのうえで出世していくというのが王道で、違う部署や内勤部署にうつることはキャリア上では不利になるような風潮があります。言いかえるとそこにあるのは、他の人と違うことをしたり今までと違う新しいことをしたりすることを拒否する、といったいけてない風潮です。

 この本を読んだ直後にあった印象的な出来事が2つ。
 ひとつは、お世話になった上司Aさんがさらにご昇進されたので、同僚3人でお祝いランチを催したときのこと。同僚の一人がAさんとの仕事の思いでを語った中に「Aさんは以前『自分は本当にこの会社には入れたことを感謝している。この会社にいるならどんな仕事でも、トイレ掃除でもする』と言われ、すごい思いだと感激した」というエピソードがありました。私もAさんを心から尊敬し、慕ってはいますが、そのとき思ったのは「自分自身はそれはイヤかも」ということでした。
 私が就職活動をした98〜99年でも「就職ってのは『就社』ではないよ」とアドバイスする人事担当者は存在しましたが、それでも「どの会社に入るのか」が大事で、どんな仕事をするのかを完全に理解して、選んだ(もしくは選ばれた)学生なんて(自分も含め)周りにはいませんでした。だから入社した「会社」に誇りがある、愛着がある、という人は私の年代にも多いと思います。でもちきりんさんに煽られ続けていると、自分の仕事内容が何であってもこの会社にいられるなら問題ない、というのはもったいないと思うようになりました。もちろん会社員である限り、会社の仕事にコミットするということは重要だし、それを怠けるのはいけないと思っています。でも与えられるものを(実は不本意なものを)粛々とこなし続けるよりは、会社の中でも自分が最も力を発揮できる、コミットできる機会を、自らつくりだすくらいの働き方がしたいと、思うようになっていました。 もうひとつ。後輩(女性・入社4年目)のBさんが、会議中にこんな目に遭ったそうです。会社の長期計画について説明していた上司Cさんが、5年目になるD君(男性)に「D、30年後の業界はどうなっていると思う?長期計画が見据えていることが何か分かるか?Dはあと30数年はこの会社に勤めるんやから、よく聞いとかなあかんぞ。まあBは結婚したら会社を辞めるんやろから関係ないやろけどな」と会議という公の場でのたまったらしいのです。
 以前なら「うちの会社の上司ってのは未だにこんな男女差別みたいなこと平気で言いよるんか…」と怒るところでしたが、これを聞いて私が最初に思ったのは「うちの会社の上司ってのは未だに20代の社員が定年までここで働くのが当然と思ってるんか…」という諦念でした。自分のおかれている環境がよくわかりました。

 ちきりんさんの新著を読んだおかげで、働き方を自らの決断で変化させた方が人生おもしろいんだな、ということがふに落ちました。それはある意味で幸せな人たちが集まっている今の職場にいたら気付かないことでした。ちきりんさんブログで実施しているアンケートをみても分かったけど、私はちきりんさんのブログの熱心な読者ですが、おそらく同じような読者の中で、働き方についてはかなり「いけてない」方なんだと思われます。
 そんな私でも、誰のためでもない、誰と比べるでもない、自分が納得する生き方・働き方をやっぱり考えよう!と改めて思えたことが、この本を読んで一番よかったことです。
 とりあえず、私がどんな決断をしてもショックを受けないように、両親にこの本を送っておこうと思いました。